痴漢・強制わいせつ
痴漢について
痴漢は何の罪が成立するか
迷惑防止条例違反
東京都の迷惑防止条例では、正当な理由なく、公共の場所や公共の乗物で衣服等の上からまたは直接に人の身体に触れる行為が禁止されており、これに違反し場合には、6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があります(なお、迷惑防止条例違反は、犯罪行為が行われた場所の条例が適用されることになります)。
強制わいせつ罪
暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為を行った場合には刑法違反として強制わいせつ罪が成立します。
この点、衣服の上からにとどまらず、下着の中にまで手を入れるなどして人の身体に触れた場合など、痴漢としての行為態様が重い場合には、実際に暴行や脅迫行為を行っていなかったとしても、被害者の反抗を著しく困難にしたとして、刑法176条に規定されている強制わいせつ罪が成立する可能性があり、これに違反した場合には、罰金刑はなく、6ヶ月以上10年以下の懲役刑が科される可能性があります。
起訴になったら99%の割合で有罪になり、前科がつく
検察官としては、証拠から被疑者がほぼ確実に罪を犯したと判断できる場合に被疑者を起訴しているため、現在の日本の刑事裁判においては、統計上の数字とはいえ、起訴されてしまうと、99.9%の確率で有罪となってしまいます。
これに対し、不起訴(ふきそ)とは、起訴されないことを意味しますが、不起訴には①嫌疑なし②嫌疑不十分③起訴猶予の3種類が存在します。
この点、①嫌疑なしとは、被疑者が罪を犯したとは判断されなかった場合をいい、②嫌疑不十分とは、被疑者が罪を犯した疑いはあるも、決定的な証拠がない場合をいいます。
そして、③起訴猶予とは、被害者が罪を犯したことは明確であるものの、被疑者の反省や、示談の有無、行為の内容、再犯のおそれの有無などを考慮して、今回は起訴することが見送られたものをいいます。
不起訴になる確率は?
迷惑防止条例違反事件については不起訴率が公表されていないため、公表されている強制わいせつ罪についてみると(なお、統計には、痴漢事件以外の事件も含まれております)、不起訴率が66%であるのに対し、起訴率は33%となっています(2019年の検察統計年報)。
そのため、統計上の数字とはいえ、痴漢行為などによる強制わいせつ罪で検挙されてしまうと、約30%以上の可能性で起訴されてしまうことになります。
強制わいせつ罪について
刑法176条の規定の説明
強制わいせつ罪については、刑法176条に「13歳以上の者に対して、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者」に成立すると規定されています。
そして、「13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」とも規定されています。
これは、13歳未満の場合は、暴行や脅迫を用いておらず、相手の同意があったとしても処罰の対象になるということを意味します。
わいせつな行為の定義
わいせつな行為とは、被害者の性的羞恥心を害する行為をいうと解されています。
具体的にどのような行為を指すのかというのはわからないと思われるでしょうが、簡単にいうと、普通の人であれば嫌がるような行為全般を指すと考えられています。
例えば、抱きつく、キス、胸や陰部を触るといった行為などが該当します。
暴行または脅迫の定義
「暴行又は脅迫」とは、被害者の反抗を著しく困難にする程度のものをいいます。
どの程度のものをいうのかすぐに思いつかないかもしれませんが、基本的には相手の同意がない場合は、ほとんどの暴行や脅迫がこれに該当すると考えてよいでしょう。
故意
強制わいせつ罪が成立するには、当該行為が強制わいせつ罪に該当するとの認識が必要になります。
そのため、相手が嫌がっていることや相手の同意がないことを認識して、わいせつな行為を行えば基本的に強制わいせつ罪が成立することになります。
それでは、相手の同意があると勘違いしてしまった場合にも強制わいせつ罪は成立するのでしょうか。
相手の同意があると誤解してしまってもやむを得ないといえるような事情を証明することができる場合には、強制わいせつ罪が成立しないことがあります。
不起訴となるために必要なこと
この点、実際に痴漢・強制わいせつを行ってしまった場合と、実際には痴漢・強制わいせつを行っていない場合とで、不起訴獲得のための重要な要素には違いがでてきます。
まず、実際に痴漢等を行ってしまった場合、自首の有無、痴漢行為の態様、示談の有無、初犯か否か(前科の有無)、余罪の有無等が重要な要素となってきます。
この点、初犯であり余罪がなかったとしても、行為態様や被害者の処罰感情等が重視され、起訴されてしまう可能性もあるため、不起訴獲得のためには、いち早く自首を試みるなどして反省の態度をしっかりと示した上で、被害の回復を図るため、被害者との示談を試みる必要があります。
この点、自首を試みたとしても、捜査機関が痴漢等を行ったという犯罪事実及び犯人を把握していない段階又は捜査機関が痴漢等を行ったという犯罪事実は把握しているものの犯人を把握していない段階でなければ、自首が成立しないことから、速やかに自首を行う必要があります。
もっとも、自首を試みたものの、捜査機関が適切な対応をしない場合もあり、かつ、自首を試みたその日に取調べを受けることになるため、弁護士のサポートの上、自首を行うのが安心です。
また、痴漢等の被害者に示談金を支払うことで、被害が一定程度回復されたと考えられ、重い処分が下される可能性が低くなり、不起訴の可能性が高まります。
そのため、いち早く痴漢等の被害者と示談を行う必要がありますが、捜査機関等からの指示により、痴漢の被害者と接触すること自体が禁止されてしまうため、弁護士に依頼をした上で、痴漢の被害者との間で示談を成立させる必要があります。
これに対し、実際に痴漢等を行っていない場合には、弁護士のサポートのもと、捜査機関に自己に不利な供述調書等を作成されないよう、否認・黙秘を貫いていく必要があります。
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監修者プロフィール
当弁護士法人は、開設以降、一貫して刑事事件をメインで扱っており、現在の私選弁護事件の取扱件数は西東京・多摩地域ではトップクラスであると自負しております。
また、当弁護士法人は、特に性犯罪事件の弁護や勾留阻止について多くの実績を有しており、また、刑事事件に特化した事務所でも重点的に取り扱うことの少ない自首のサポートに注力している点も特色です。 |
